· 

病気があっても病人ではない


自分は病人だ。それも、がんという重篤な病気にかかった病人なのだ。

 

このようなレッテルを自分に貼りつけて、それを背中いっぱいにしょい込んでいませんか?

 

がん哲学には、「病気であることと、病人であること」は違うという考え方があります。

 

それは、がんという属性が今たまたま付いているものの、「自分である」という事は病気になる前と少しも変わらないという意味です。そして、その変わらない自分ままがんと向き合って良いし、友人や知人とそれまで通りのつき合いをしたり、おしゃべりをして笑ったり、或は、仕事や趣味を続けてもいいという考え方です。

 

実際、そのように生きているがん当事者は、世界中にたくさんいます。

「病人である」ことをあたかも自分のアイデンティティ(肩書き)とする必要はありません。そうしてしまえば、本当に「病人としての自分」をつくりあげてしまからです。

 

この点は、家族も一緒かもしれません。「うちには病人がいる…」との心情で日々を過ごしていると、いやでも「病人である自分」を本人に意識させることになるでしょうし、家族側も、「病人の家族」としてのアイデンティティを生き始めることになるでしょう。

 

病人として生きるか、それとも病気でも自分らしく生きるか。それを決めるのは、本人とその家族ではないでしょうか(p24~p25)。

 

<参考文献>